ブックタイトル公益財団法人 日本高等教育評価機構 10周年誌

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概要

公益財団法人 日本高等教育評価機構 10周年誌

074座談会「認証評価とJIHEEの10年後のために」でやりましょうという感じでした。これは外からの要求と言いますか、日本の第三者評価制度は国際的にはかなり遅れをとっていましたから、とにかく大学評価を急いでやり、更には短大も専門職大学院もともかくやろうと。短大と大学の学生の違いをどう理解するのかという大問題を議論している間もありませんでした。専門職大学院の評価基準を作るといっても、分野別の評価を今後どうするのかの見通しも立っていなかったわけですよ。このような状態で突き進むだけでは結果的に間違った方向にいく恐れもあるかと思います。制度は始まりましたが、これからの問題がたくさん残されているというのが一番の印象ですね。■認証評価の現状について相良 この10 年の間に、第1 サイクルの7年間が終わりました。その段階で当機構では瀧澤先生にご指摘いただいた点も含めて、さまざまな問題点を解決すべく評価基準を改定しました。自己評価が評価機関への説明のためにあるというような印象があったこと、あるいは社会に対して本当に説明責任、アカウンタビリティを果たしているのかという点も意識して改定したつもりです。内田先生は国立大学の認証評価とこの辺りの関係をどうお考えでしょうか。内田 かつては、国立大学では経営という視点は全くなかったわけですが、10 年前に法人化しました。私はそれから2 年たったところで、お茶の水女子大学の総務人事担当の理事・副学長を務め、その後、研究と国際交流、社会貢献の産学連携担当理事・副学長を2 年務めました。その経験から、国立大学は経営的に危ないのではと思ったわけですね。ステークホルダーに対する説明責任や、社会貢献の部分をきちんと盛込まなければいけないと感じていました。 こちらの委員を引受けさせていただいて思いましたのは、私立大学はそれぞれが建学の精神をお持ちで、それを実現する体制を作って運営されているところが違うなと。自前で運営し生抜いていくために、社会貢献とか地域との連携について早くから認識されているという点が、国立大学法人との一番大きな違いだということを実感しました。相良 福井先生の大学は音楽大学ということで、1 年生から非常に専門性の高い特定の教育をされるわけですが、認証評価について何かお気づきの点、お考えの点ございますか。福井 平成17 年の中教審の将来像答申で、大学の七つの機能の5 番目に特定の専門的分野として、芸術、体育等の教育研究とありました。これらは他の分野と全く別の特定の分野だと書かれているのですね。 音楽大学として一例を挙げれば、教員採用で難しい点があります。専任教員が採れないのです。学生が専攻する楽器と合わせる必要がありますが、楽器によっては教員の持ち時間が1週間に2 時間とか3 時間しかないので、専任としては採れません。例えば一流オーケストラのメンバーや合唱団を持っておられる方は、学生から見れば習いたい先生になるわけですね。また、優秀な技術を持っているなど、どうしてもあの先生に習いたいということが出てきます。ですから非常勤の教員の数が多くなり、専兼比率を問う今の評価基準で評価されると戸惑います。したがって、当然主要科目を教授や准教授が担当することが不可能な場合も起こります。教員は若い頃自分の音楽を究める活動をしていて、教員になる時期はそれが円熟し、それほど外部で演奏などの活動をしなくなってからという傾向が強い。一方で、若い先生をあまり早く専任として採用してしまうと、自分の技能向上に必要な演奏活動がしづらくなります。そういう中で優秀な方を確保して、将来的にだんだんと教育に重点を置いてもらうようにしないといけないということになりますね。そういう矛盾があるんです。ほかにも実技試験の採点などいろいろありますが、体育もそういうところがあるのではないかと想像しています。 瀧澤 自己点検・評価の見方というのは、かなりグラグラ揺れてきているんですね。「音楽や体育など特定的分野では非常勤教員の数が多くなり、同じ評価基準での評価は難しい」(福井)「自己点検・評価を基本としつつ、外からの評価という危険性を内包して始まったのが認証評価」(瀧澤)内田伸子氏 佐藤東洋士氏