ブックタイトル公益財団法人 日本高等教育評価機構 10周年誌

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公益財団法人 日本高等教育評価機構 10周年誌

第5 章 明日に向けて座談会「認証評価とJIHEE の10 年後のために」075もともと自己点検・評価が大学評価の基本であると中教審でも言ってきたわけですが、それが変わってきたのは、国立大学の法人化のショックもあり、監視的・規制的なニュアンスが強くなってきているんですね。中教審の答申ですら、自己点検・評価は客観性のうえで問題があると懐疑的な見方を打出してきたりして、そこでもう少し規制的な第三者評価を作る必要があるとなったり。自分で自分を評価する方式には限界があるという見方も答申にまで書かれているんですね。ただ、方向として間違ってはいけないのは、評価が文化として大学の社会に定着するためには、大学の自主性が基本であるというのは疑いのないこととして国際的に受入れられていること。そこで日本だけが評価の形を変えていくわけにはいかない。 もう一つ挙げれば、非常に不幸であったのは、認証評価の議論が始まった頃は規制改革が政治の本流になった時期なんですね。規制改革の基本は市場主義であって、競争がなければ良くはならない。事業への参入は自由にできるようにしておく、それを受ける側が自由に選択できる市場が必要ということなんですね。それで、事前の規制はいけないと。事前の規制は要するに既得権の保護になるということで、事前の規制はやめて事後のチェックでいくことを大原則にしたんですね。で、設置審査ではなく全部事後のチェックでやる。事後のチェックですから設置後の運営全般への行政的な監視装置になりかねない。そうした危険性を内部に抱えながら始まったのが認証評価だと思うんですね。このことを十分に認識して、間違った方向にいかないように気を付けているべきだと思います。佐藤 国立大学の法人評価と認証評価というのは別なんですよね。国立大学の法人評価というのは、あくまでも中期目標を立ててそれを達成しているかどうかで、それに対して運営費交付金がどのようについてくるかということだと思います。つまり、効率化を念頭に置きながら評価をしていく。一方、認証評価は、中教審の大学分科会にかけて、その機関が評価機関として適当であるかということの審査を受けてから始めるわけですよね。これも含めて、認証評価は設置基準が下敷きになっていて、上から与えられたものなんですね。一方、諸外国を見ると基本的にはピア・レビューですから、お互いにこのレベルでいきましょうと決めていくのであって、国が基準の一つひとつについて審査しない。 そういう意味では、大学基準協会もうちも会員制をとっているわけですから、会員の声をもう少し取入れるべきかなと思います。最近よく議論になりますが、小さな大学を一定規模の大学に要求されているような基準と同じような基準で評価できるのかということ。それが上から与えられた、役所が認めた評価基準に従っていくとそうせざるを得ないのですが、これについてはもう少し方法を考えないといけないと思っています。■第2 サイクルに入って相良 当新システムの改定に瀧澤先生は深く関わっていらっしゃいましたが、第2 サイクルの評価のあり方については、どうお考えですか。瀧澤 私が一番変わったと思いますのは、今までは本当の自己点検・評価にはなってなかったわけですよ。要するに、基準を満たしているかという判定自体は自己評価の段階ではしない。ただ問題があるという段階で終わっているわけです。最終的な判定は評価機関にお任せするということで、最終的な判定の責任を大学が負うことはなかった。だから、自己点検・評価が本来の役割を果たさなかったのだと思うんですね。変わった一番の点は、最終的に基準に合っているかどうか、大学が自分の責任で判定して世の中に出すということだと思います。福井 第1サイクルの評価というのは簡単にいえばQ&Aだったと思うんですね。評価機構が出した細かい基準がたくさんあり、それに対していい答案を出したら結果はいいと判定してくださる。したがって、自己点検・評価やPDCA の進行には、あまり効果的ではなかった。評価をしてくださる側も、どちらかというと、評価をするんだという上から目線の雰囲気があったような気がするんですね。その点に関しては佐藤先生がおっしゃったように、年を追うごとにピア・レビューの方向になってきているように思います。審査というのではなくて、ピア・レビューの趣旨からすると、できるだけ協力するような形で評価できるといいと思うんです。更に、サポートするような機能が相当あってもいいという気がします。 そうはいいながら、評価を受ける大学としてはその準備を、それも特に小さな大学では、教職員が総出でやらなければいけなかったものですから、学内の連絡が悪かったのをお互いに認識し、お互いの苦労もわかって、副次的に教職協働などのいい成果がたくさんあったことも事実です。ですから、決して無駄ではなかったわけです。「新システムの一番変わった点は、大学が自分の責任で判定して世の中に出すということです」(瀧澤)