ブックタイトル公益財団法人 日本高等教育評価機構 10周年誌

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公益財団法人 日本高等教育評価機構 10周年誌

第5 章 明日に向けて077ある程度全体的な調整が行われる仕組みでやっているんですね。大学を飛越えた、もうちょっと広い枠の中で専門分野別のあり方の基準を考え、仕組みを作らないとどうにもならない。学術会議に全部任せて済むとはとても思えない。内田 量の評価というのは非常に簡単ですよね。論文はいくつ出たか、とか。でも、福井先生も先ほどお出しくださっていますけれども、問題は質の評価ですよね。パフォーマンス、ファッション、演劇、それから音楽や体育スポーツ系、こういう評価は一体どうしていくのか。もう6 年も発掘し続けてきたが化石が出てこないので論文が書けない、というような、人文社会系で長く時間がかかるような分野ですと、その評価は非常に難しいわけですよね。でも、実際にその研究に携わっているわけですからそのプロセスをちゃんと評価した方がいいのではないか。単なる論文の数だけじゃ駄目だということで、分野別の特色をうまく評価する公平な基準、適応的な基準が作れないと、学問分野においてはダメージを受けてしまうんではないかと。国立大学が法人化して中間評価というのを文科省がやったんですけれども、やっぱり研究が非常に小作りになっています。 私は学術会議で心理学分野の評価基準を考えているんですけれども、心理学分野は論文を比較的書きやすい領域ですが、こと教育委員会と連携すると、単行本を6 年かけて書く方が論文を何本も書くよりもずっといいんだっていうような議論があってなかなかまとまらない状況なんですね。どこかの教育や研究領域にダメージを与えるような形での基準は作らず、それぞれの分野の専門家集団がその立場から評価していく基準を出しながら調整していくことが必要なのかなと思いました。佐藤 かつては、例えば経済学を教えるのであれば、必修科目がこれで、主要な科目は専任教員がいないといけないとか、全部こと細かに決まっていました。申請するほうはそれを満たしていればいいので、ある意味で極めて便利なものがあったんですよね。今はありませんから、分野の教育内容について、あるいはカリキュラム内容について評価する物差しはどこも持っていないのかもしれませんね。すると今のところ私どもを含めて、カリキュラムの内容の評価までできていない。シラバスの内容が適当かどうかまで全然議論の対象ではない。ですから、分野別評価をどうするかが今後の課題となるところでしょうね。■認証評価のこれから  相良 大学ポートレート事業との関連、ガバナンスの強化、学修成果を重視した評価など、次のサイクルではさまざまな課題を解決していかなければなりません。さらに当機構は、評価を大学改革・改善に生かす体制、評価結果の社会への浸透、評価体制の強化、専門分野別評価への対応なども重要課題と捉えています。今後の評価のあり方について、内田先生、お話しいただけますか。内田 一番の基本は佐藤先生が先ほどおっしゃったことを踏まえて、それぞれの大学の個性とか建学の精神を生かす運営体制であるか、そしてそれがステークホルダーである学生たちに一定の質の教育を十分に提供しているのかをしっかり見ていかないといけないだろうと。評価する側の姿勢としましては、対話型の評価をしていきたい。それで私学としての特性を踏まえたそれぞれが良い教育を社会に向かって提供していけるように、それを監視するというかまた評価する。そして評価を受ける側の大学が、これまでの自分たちの運営が建学の精神やミッションにかなうものであるのかを振返り、欠陥がある場合にそこを補って更に成長していけるような、そういうきっかけに評価がなることが基本ではないかと。 分野別の評価は非常に難しく、試行錯誤の段階かもしれないですが、学生に本当に良い教育ができているのかどうかという観点で見ていく、評価というより振返りの記録を提出していただくような形ではどうかと思います。佐藤 最近の中教審の答申を読むと、アカウンタビリティとかコンプライアンスとかガバナンスとか、いずれも社会に対する説明責任ということから出てきているんだと思いますが、国が決めるんではなくて、大学人が社会に対してどう説明していくのかということが問われているということでしてね。運営している当事者が問われている問題で、あり方ではないと思います。そう「論文の数などの量ではなく、特色を質として評価しなければダメージを受ける学問分野もある」(内田)「建学の精神を生かす運営体制か、一定の質の教育を提供しているかをしっかり見ないといけない」(内田)座談会「認証評価とJIHEE の10 年後のために」福井直敬氏