日本高等教育評価機構だより

平成28(2016)年8月24日分掲載

認証評価における評価員の重要性
平成28年度 評価員セミナーを実施して

評価員について

平成28年度、日本高等教育評価機構(以下、「当機構」という)は、80大学、3短期大学の認証評価と1再評価を実施する。実際の書面調査や実地調査は、各大学、短期大学につき4、5人の評価員で構成された評価チームが担当しており、今年度は、大学機関別認証評価では359人、短期大学機関別認証評価では13人、再評価に2人の延べ374人の評価員に評価を担当していただくことになった。

評価員は、国公私立大学及びその他関係機関の長から推薦され、評価員候補者として登録された者の中から、判定委員会が選定し、理事長が委嘱している。

大学及び短期大学評価判定委員会では、①担当大学の学問分野を専門とする方、②規模、特徴が近い大学に所属している方、③隣接の都道府県の競合校以外の大学に所属する方、④評価経験者を増やすため、可能な限り各評価チームに少なくとも一人は未経験者を選定するなど、いくつかの方針に基づき、評価チームを編制している。ただし、評価への影響にかんがみ、対象校の卒業者、現役の教職員や役員、あるいは5年以内に在職経験のある教職員や役員、競合する近隣大学・短期大学の関係者などは、評価員の業務に従事できないこととしている。(表1)

(表1)評価員及び判定委員の関係する大学の範囲

評価対象大学の卒業者
評価対象大学に専任、または兼任として在職(就任予定を含む。)し、あるいは5年間以内に在職していた場合
評価対象大学に役員として在職(就任予定を含む。)し、あるいは5年間以内に在職していた場合
評価対象大学に役員として在職(就任予定を含む。)し、あるいは5年間以内に在職していた場合
評価対象大学の教育研究または経営に関する重要事項を審議する組織に参画しており、(参画予定を含む。)、あるいは5年間以内に参画していた場合
評価対象大学の競合する近隣の大学の関係者
その他、評価機構で不適正と認める者

今年度の評価実施校のうち、同一法人内に設置された2大学が評価を受ける事例が4法人8大学あり、それぞれ2大学については、一人の評価員にそれぞれの評価チームの団長をお願いしている。また、大学機関別認証評価と短期大学機関別認証評価の同時受審(※1)については、団長と事務系の評価員が大学及び短期大学の評価チームを担当するなど、一部の評価員は複数の大学及び短期大学を担当している。

※1…同一法人内に大学と短期大学が設置されている場合に、大学機関別認証評価と短期大学機関別認証評価を日本高等教育評価機構で同じ年度に評価を受けること。

評価者に対する研修

評価者への研修は、学校教育法第110条第2項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令 第2条3項「認証評価の業務に従事する者に対し、研修の実施その他の必要な措置を講じていること」に基づいて、認証評価機関に義務付けられている。

さらに、当機構では大学評価判定委員会のもとにある評価員養成検討委員会において評価員の養成に関することが検討されることになっており、同委員会の検討結果を踏まえ、評価者の評価活動における実務について理解を深めることを目的とした「評価員セミナー」を毎年度開催している。

「平成28年度評価員セミナー」を6月中旬から7月上旬にかけて6日程、6会場で開催した。

受審大学の実地調査の日程を踏まえ、チームごとの参加を促し、会場ごとに11~15チーム、52~70人の参加があり、大学機関別認証評価を担当する評価員と短期大学機関別認証評価を担当する評価員合わせて361人が参加した。

評価員セミナーは、午前11時から午後4時30分までのプログラム(表2)で開催した。午前中は、当機構で初めて評価に携わる評価員を対象に、途中に動画の視聴も交えて、評価員の心構えや実務の流れを解説した。午後は、経験者も合流し、評価基準や判断例等についての解説を行った。

(表2)平成28年度 機関別認証評価 評価員セミナープログラム

11:00~12:00 第1部.解説
「認証評価における実務の流れについて」
12:00~13:00 ― 昼食 ―
13:00~13:10 挨拶
13:10~13:40 第2部.解説
「日本高等教育評価機構が行う認証評価について」
13:40~15:35 第3部.解説
「認証評価における判断例等について」
15:35~15:45 第4部.質疑応答
15:45~16:15 第5部.大学ごとの情報共有
16:15~16:20 ― アンケート記入時間 ―
閉会

解説資料には評価対象者向けマニュアル「評価のてびき」を使用した。また、プログラムの最後には、担当大学ごとのチームに分かれて、情報共有する時間を設けた。

大学ごとの情報共有については、平成24年度から実施しており、第1回評価員会議前に顔合わせができると好評である。また、未経験者が評価経験者に質問をすることで評価に対する不安を解消できることも好評の理由の一つである。

アンケートの実施

評価員セミナーでは、当機構の評価システムの改革・改善に役立てるために、参加者(評価員)に対してアンケートを実施している。

セミナーの内容が開催趣旨に沿ったものであったかについては、今年度の評価担当者に限定した具体的な内容にしていることもあり、参加者の約9割が「そう思う」と回答している。

評価員セミナーのプログラムや解説内容、時間配分については、アンケートの結果を踏まえ、大学評価判定委員会の小委員会である評価員養成検討委員会で検討している。

プログラムは、平成25年度に実施したセミナー以降大幅な変更はないが、過去には、評価の平準化やより精度の高い評価を目指して、評価経験者による経験談を講演やパネルディスカッション形式で実施したことや、円滑な評価活動を目指して、団長のみを対象としたセミナーも開催したことがある。

評価経験に基づいて、対象を分けて実施している現行の方式については、8割以上の評価員から賛同を得られているが、チームごとに参加を促すことで、会場の広さの関係から一会場あたりの参加者数が限定されることや全員が同じ日に参加できない場合などが今後の検討課題である。

評価員候補者について

認証評価において、評価員の確保は生命線である。現在、約800人の評価員候補者の登録があり、その中から平成28年度の評価実施のために374人の評価員の委嘱をした。

平成25年度に実施した「評価員候補者の推薦と登録に関する調査研究」では、評価員候補者を推薦する理由として、「他大学の評価を通じて高等教育情勢を広く学び、学内へフィードバックしてもらうため」「学内の自己点検・評価活動を推進してもらうため」「受審準備に向けて経験を積んでもらうため」などの回答が多かった。

今年度の評価員セミナーのアンケートにおいて、評価員の経験は今後どのような活動に生かせるかという質問に対して、「所属大学の自己点検・評価活動」「所属大学の管理・運営」「所属大学の認証評価申請準備」の順で回答が多かった。

毎年評価終了時に行うアンケートでは、実際に評価に携わった評価員から「外部からの視点、指摘を受けてはじめて、わかることや改善できることがあると思う。そういう意味では、認証評価の場でお互いがピアレビューの精神で意見を交換し、改善につなげることが可能である認証評価は、改めて意義があると感じた」「他の大学の状況を学ぶことができ、自分の勤務校の改善のための参考にすることができると思った」などの意見があり、評価員候補者を推薦する大学側においても、実際に評価に携わる評価員においても、一定の評価を受けている。

平成29年度は、79大学、7短期大学の認証評価と5再評価の申請を受付けた。この申請数は当機構設立以来最多であり、原則1大学あたりの評価員を5人とすると400人以上の評価員が必要となる。評価員あっての認証評価であることをご理解いただき、引続き評価員候補者の推薦、評価員の派遣及び評価員としての活動にご協力いただきたい。

(評価事業課長 永井良政)

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