日本高等教育評価機構だより

令和3(2021)年8月25日分掲載

コロナ禍における令和2年度の認証評価を実施して ―受審大学の立場から―

はじめに

愛知産業大学(以下「本学」)の自己点検評価の主体組織は、自己点検・評価委員会で、様々なデータや資料・情報はIR委員会(両委員会とも委員長は学長)の下、一元的にIR推進室が収集整理と分析を行い、これらが連携して実施している。実際には、委員会構成委員である教職員の責任者(学部長・学科長・各委員会委員長と部課長)が執筆責任者となって、全教職員協働の下、毎年自己点検評価書の作成を行ってきている。財務的および法人事項に係る点は、法人事務局との共同作業あるいは同局担当部署にお願いする作業となっている。日本高等教育評価機構(以下「評価機構」)の機関別認証評価(以下「認証評価」)は平成30年度から第3サイクルが始まった。「内部質保証」という指針による新しい観点からの点検評価をしっかりと理解して行う必要があり、この点を十分に配慮して、令和2年度の認証評価の受審に臨むこととなった。

コロナ禍の展開

令和元年10月、次年度に受審する認証評価へ対応する体制を整えて、自己点検・評価委員会を中心に作業に入った。その作業は、年末までは順調に進み始めていた。令和2年に入って詳細は不明ながら「中国武漢の海鮮市場で新しい感染症が蔓延しつつある」というニュースが日本にもたらされた。それはまさに新型コロナウィルス感染症であった。そして、ダイヤモンドプリンセス号内での出来事が伝えられてきた。それから瞬く間に国内においても感染の広がりがみられ、いわゆる日常生活がそのまま維持できないような事態に展開した。

大学にとって、この感染症に対する初めの関門が入学試験であった。入学試験は大学にとって最も重要な行事であり、受験生のためにも決して中止できないものである。3密を避け、冬季の寒さにも対処し、その関門は、教職員の工夫と努力で何とか乗り越えることができ、3月の卒業式も分散型で挙行できた。コロナ対策のため、その間の受審作業への影響は少なからず生じた。データ整理や下書き執筆は予定よりも遅延した。

受審作業への影響

令和2年4月16日には緊急事態宣言の発出が全国に及び、実質上自由な行動が制限されることになった。4月からの新学期、分散型をとることで入学式やガイダンスは幸いにも挙行できた。しかし授業は、遠隔授業となった。学内会議もWeb会議や遠隔システムを利用した会議が主流となった。前年度から行われてきた認証評価受審用の自己点検評価書の作成は、各担当で分担しつつ完成へ向かってはいたが、遠隔授業の実施や各種対応・手続きを含めたコロナ関係の対策などの用務の増加は避けられず、全体的な仕上げが当初予定よりも遅れていた。自己点検評価書は、筋の通ったものとすることが重要であり、作成過程において内容的にも書き振りにも統一感が求められると考えてきた。前回受審の認証評価と毎年の自己点検評価の場合がそうであったように、関係者が顔を揃えて集まり、一同が書かれた自己点検評価書を読みながら議論し、推敲して完成させていく方法を予定していたので、それができないことは精彩を欠き、筋の通った分かりやすいものとしての完成が危ぶまれた。しかし、各担当者の執筆範囲については学内Web上での議論に時間をとり、各担当者が時間を十分にかけて査読・校閲を行うことで、内容を担保するように精査を行った。そして、まとめる段階では極端に人数を絞り、所謂コロナ感染対策の徹底を図り、少数精鋭で自己点検評価書の点検に当たることとした。これはむしろ、困難な状況下であったがため責任感の点からも精密に検討を十分に行うことができ、完成度を高めることにつながったのかもしれない。

実地調査への対応

一方、評価機構におかれては、コロナ禍の状況をご斟酌いただき、自己点検評価書やデータ・エビデンスなどの資料類の提出期限を令和2年7月31日まで延期いただいた。これにより十分な準備を行うことができ、評価機構には感謝申し上げたい。この時点では実地調査は予定通り11月11日から13日に行われるとして準備を進めた。審査される評価員の方々と事務局との連携、資料点検や査読の方法について大変なご苦労があったことが拝察される。10月には書面質問があり、その回答作成を行った。

その間、後期授業は対面授業とコロナ対策の両面を担保するため、学生を2グループに分けて、遠隔授業と対面授業を隔週で行う方式を実施した。これは、教員にとっても学生にとっても初めての経験であり、時間を多く割かれることや学生へのQ&Aの確保などを行う必要があり、認証評価への対処は、教職員個人でそれなりの苦労があったことは否めない。結局、コロナ禍蔓延の収束は迎えられず、実地調査では、評価員の方々の来学が叶わず、遠隔システムでの開催となった。そのため、大学の現地見学の機会がなく、動画を作成しての見学となった。本学としては、現地での「一見に如かず」に劣らないような動画制作を心がけた。学生の姿が見えるキャンパスを見ていただきたかったとの思いを込めたつもりである。

実地調査当日

いよいよ遠隔システムによる実地調査の日を迎えた。使い慣れてはきたものの遠隔会議は3次元の世界ではなく、十分な説明ができるかどうかが危惧された。しかし、団長先生はじめ評価員の方々、事務局の方々ともわかりやすいお話の仕方で質問やご意見をいただき、受審する側としては混乱することなく、実際の対面に近い雰囲気の中で応答することができた。全員が同じ空間に会する場合と異なるのは仕方ないと考え、受審側としては、できるだけ質問に対して適切な回答者を選択あるいは依頼して、明確にかつ長くならないようにわかりやすい説明を心がけた。学生への評価員の方々からのインタビューにあたっては、コロナ禍でもあり遠隔ということもあり危惧していたが、学生からは積極的に参加を申し出ていただけたことは嬉しかった。初めての遠隔システムによる実地調査ではあったが、受審側としては説明しきれなかった、あるいは誤解が生じてしまったと言うことは特に感じられず、評価員の方々の適切な進行と質疑がなされたからと感じた。その意味では、終了後に手応えを感じたといえる。

認証評価報告

令和3年1月、コロナは第3波を迎え2回目の緊急事態宣言が発出され、感染者も日々増してきた。その中、評価機構から評価チームの評価報告書案が届いた。幸いに十分な評価を頂戴し一同新しい日常の中での受審であったが、その甲斐があったことに安心した。一部の用語訂正等をお願いし、2月の評価報告書案のご提示をいただき、最終結果を待つこととなった。

令和3年3月、無事「適合」の判定と「優れた点」をお認めいただき、認定証、評価報告書を受領でき、大学のホームページに自己点検評価書とともに公開することができた。最後に、コロナ禍での認証評価受審であったが、このような経緯の中で無事終了したことについて関係各位に深謝の意を表したい。

(愛知産業大学学長 堀越哲美)

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