日本高等教育評価機構だより(日本私立大学協会発行『教育学術新聞』連載)

平成28(2016)年11月23日分掲載

日本高等教育評価機構の運営
‐公益財団法人として‐

はじめに

 日本高等教育評価機構(以下、「評価機構」)は、日本私立大学協会を設立母体として、平成16年11月に財団法人として設立され、翌平成17年7月から学校教育法に基づく認証評価機関として、大学等の認証評価を実施して12年が経過した。
 平成24年4月からは、公益法人制度改革関連三法(*1)に基づく「公益財団法人」に移行し、新しい公益法人制度により運営されている。以下、評価機構の現状を紹介する。

*1 公益法人制度改革関連三法(公益三法) 「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(法人法)、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(認定法)、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(整備法)の三法のこと

【新公益法人制度への移行】

 旧公益法人制度は、明治31年の民法施行以来、110年にわたって民間非営利部門において大きな役割を果たしたが、歳月の経過により時代の要請も変わり、多様化する社会のニーズに対応できなくなった。
 そこで、現代社会が求める多様な公益活動を民間の非営利部門が自発的に行える制度として再構築され、平成20年12月、公益法人制度改革関連三法が施行された。
 新公益法人制度への移行に当たっては、一般社団・財団法人法及び公益法人認定法により厳しい条件が課され、ガバナンス改革を伴うものであったが、認証評価事業は公正かつ適格性が求められる公益性の高い事業であり、公益法人への移行が評価対象校の信頼性の向上・発展に寄与するものとして、次のとおり移行が決定された。

・平成21年12月
公益財団法人移行を理事会決定
・同23年10月
内閣府へ移行の申請
・同24年3月
内閣総理大臣からの移行の認定
・同24年4月
黒田壽二理事長のもと「公益財団法人」として発足

【公益目的事業の実施】

 評価機構が実施する認証評価が、公益法人認定法上の「公益目的事業」と認定されるためには、認定法に定める①「事業の種類」及び②「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」に該当することが必要であった。移行申請に当たっては、①は「学術及び科学技術の振興を目的とする事業」、②については、「評価(検定・検査)は不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業」に当たる旨の説明を行った。
 また、評価機構の事業は、公益目的事業である認証評価事業のみであり、収益事業は行っていない。
 認証評価事業は、平成17年度から平成27年度までに、大学機関別が延べ459大学、短期大学機関別が6短期大学のほか、ファッション・ビジネス系専門職大学院大学の認証評価を2度実施し、優れた取組みや他大学の参考となる特色等を公表してきた。大学に対しては、公表する内容のほか、大学のみに通知する参考意見、改善を要する点などを通知することにより、フォローアップにも努めている。
 このほか、評価に関する国内外の調査を実施するとともに、国際的通用性を高める取組みとして、国際会議等への参加、海外の関係機関との交流協定の締結等にも取組んでいる。

【評議員会、理事会】

 公益法人は、公益法人制度改革関連三法に基づく機関運営が必要となる。評価機構においては、公益法人への移行に当たり、従来の寄附行為を法令に準拠した定款へ転換するとともに、運営組織等の見直しを行った。
 理事会、評議員、評議員会は、従来の任意の機関から法定の機関となり、職務・権限・義務が変わるとともに、評議員、理事、監事の定数の見直し(現員:評議員18人、理事18人、監事2人)、任期の変更(評議員4年、理事・監事2年)などを行った。
 また、新制度では、委任状による代理出席は認められなくなり、評議員会理事会・は本人の出席が必須となったほか、評議員会は役員や理事会を監督する役割を担うこととなり、理事会が評議員を選ぶことはできなくなった。
 移行後の運営組織の概要は次のとおりである。

<評議員会>
 法人の必置の最高議決機関として位置付けられた。評議員会の具体的な権限は、理事及び監事の選任又は解任の決定などが定款に定められ、この範囲内で職務が執行されている。
<理事会>
 理事会及び監事は必置の機関で、理事会は法人の業務執行の決定のほか、理事の職務執行の監督をする。業務執行の機動性を保つため、代表理事(理事長)、業務執行理事(副理事長、常務理事)を置いている。
<監事>
 監事は、理事の職務執行を監査し、監査報告を作成する。理事会への出席のほか、評議員会へも出席をして必要に応じて意見を述べる。

【事務局体制】

 事業を円滑に実施するための事務局は、総務部、評価事業部、評価研究部の三部体制となっている。総務部は、経営企画、人事、財務等に関すること。評価事業部は、大学の教育研究活動等の評価の実施、評価員の養成等、評価の普及啓発及び広報活動等に関すること。評価研究部は、評価の調査研究、国際化への対応に関することなどを分掌している。
 人員配置は、表1のとおりである。
 なお、評価機構では、評価業務の実務経験を通じ、各大学の内部質保証システムの充実、評価業務の円滑な遂行に資する人材の養成にも寄与することを目的とする研修員受入制度を設けている。

(表1)事務局人員配置(10月現在)

(単位:人)

※( )は、兼務者数(外数)

【財政等】

 評価機構の主な収入は、会員校からの会費及び受審大学7年間の状況は、表2のとおりである。会費収入はほぼ横ばいであるが、評価料収入は受審大学数に比例して増減している。このため、年度による受審校数の偏りにより、収入額の変動が大きくなる状況にある。
 このような事業収益による年度ごとの増減は、法人運営の大きな障害となることから、収益が増加する年度に評価事業引当特定費用準備資金として積立てを行い、減少する年度に取崩すという工夫をしながらの財政運営を行っている。
 公益認定法人には、公益法人認定法により、財政上の制限(①公益目的事業比率、②収支相償、③遊休財産の保有の制限)が課せられており、特定資産の積立て制度を活用しつつ、これらの制限に抵触しないよう財政運営に努めている。

(表2)評価実施校数と収入財源(10月現在)

(平成22年度~平成28年度)

(単位:百万円)

【おわりに】

 現在、認証評価事業は第2サイクルのほぼ終盤を迎えるが、評価機構では、いわゆる細目省令(平成30年4月施行)等を踏まえた第3期の評価システムの構築について取組んでいる。全国約340校の会員校と延べ550校の評価対象校に支えられた認証評価機関・公益財団法人として、それぞれの大学の改革・改善に資することができるよう適切な運営を心がけ、努力を重ねていく所存である。
(総務部部長 橋本美克)