日本高等教育評価機構だより(日本私立大学協会発行『教育学術新聞』連載)

平成29(2017)年4月26日分掲載

認証評価結果及び改善報告等の審査
―平成28年度評価を振り返って―

 (公財)日本高等教育評価機構(評価機構)が実施する大学等の機関別認証評価の平成28年度の評価結果が、去る3月に公表された。本稿では、各大学の優れた取組みをはじめとする指摘内容や、評価機構が大学に対するフォローアップの一環として実施している改善報告書の審査の結果から、昨年度の認証評価を振り返ってみたい。

80大学・3短大の評価を実施

 平成28年度の認証評価は、80大学・3短期大学を対象として実施した。その結果、80大学中、77大学が「適合」、3大学が「保留」となった。また、平成26年度の評価で保留となっていた1大学に対する再評価の結果は「適合」となった。認証評価の結果が「適合」となった77大学のうち、40大学には「改善を要する点」の指摘がなかった。一方、37大学には「改善を要する点」の指摘があり、今後3年以内に改善報告書を大学のホームページに公表するとともに、評価機構への提出を求めた。改善報告書の仕組みは本稿の後半に改めて紹介する。
 今回「保留」となった3大学については、一部の基準が満たされていないと判断されたが、それらの要因が1年以内に改善することが可能であると大学評価判定委員会が判断したため、判定を保留し、平成30年度に再評価を受けることを求めた。
 3短期大学の認証評価については、評価結果が全て「適合」であり、「改善を要する点」は全くなかった。

「優れた点」の多くは教学関係

 評価結果の内容を基準ごとでみると、大学と短期大学ともに「優れた点」の指摘件数が最も多かったのは「基準2 学修と教授」であった(別表1)。
 「優れた点」は、他校の模範となるような先進的な取組みで、かつ十分な成果を挙げているとして評価している。教学関係では、特に、「教育課程及び教授方法」「学修及び授業の支援」「教育環境の整備」の面で多くの「優れた点」が挙げられた。
 一方、「改善を要する点」については、基準2、3ともに指摘が多かった。基準2の「学生の受入れ」における定員未充足に関しては、平成27年度同様に最も指摘が多く、評価を受けた大学のうち、29校に「改善を要する点」が付された。「基準3 経営・管理と財務」では、「理事会の機能」「コミュニケーションとガバナンス」における寄附行為違反や、学長のガバナンスの機能、「財務」における中長期計画の策定や計画に基づく収支のバランスの確保に関する指摘が多かった。
 平成28年度の評価を総括すると、学生数の確保や安定した財政基盤の確立などが求められる一方、教学面においては、教育課程及び学修支援などにおける工夫や学生のための環境整備などの積極的な取組みが目立った。

フォローアップとしての改善報告書

 認証評価実施後、「改善を要する点」として指摘等があった場合には、評価機構が行う大学へのフォローアップの一環として、大学に改善報告書の公表及び提出を求めている。平成23年度までの認証評価では、認証評価結果が「認定」かつ「条件」が付された大学には、評価機構が指定した期日までに改善報告書の提出を求めた。平成24年度以降は、認証評価結果が「適合」の大学のうち、「改善を要する点」の指摘があった場合、3年以内に改善報告書を大学のホームページに公表の上、エビデンスとともに提出を求めた。改善報告書の受付期間は、毎年度7月中としている。提出された報告書は、大学評価判定委員会の下部組織である改善報告等審査会において審査の上、「改善が認められた」「概ね改善が認められた」「改善が認められないので、継続的な改善が求められる」のいずれかの審査結果及び必要に応じた「留意事項」を付し、大学評価判定委員会での承認を得て、大学へ通知している。なお、短期大学の改善報告書の取扱いは、改善報告等審査会が設けられていないので、短期大学評価判定委員会において審査・決定の上、短期大学への通知を行っている。
 「条件」を付されるかまたは「改善を要する点」として指摘があった内容は、定員の未充足、理事会の運営や法令遵守、財政基盤に関する中長期計画、自己点検・評価実施に関する問題など多岐にわたっている。その中でも、特に少子化や都市部の学生集中などの影響による定員未充足や、財政基盤の問題は容易に改善するものではなく、別表2の未改善の計21件の指摘のうち、定員未充足の問題が12件、財政基盤の問題の7件と合わせると全体の約9割を占めている。その大学の多くは収容定員1,000人未満の地方の小規模大学である。
 一方、大学等が指摘された事項を真摯に受け止め、改革・改善に努めた結果、平成22年度から28年度までに審査された134件の改善報告書のうち、別表2のとおり、審査結果が「改善」又は「概ね改善」が113件で全体の8割以上となった。このことは改善報告書の提出が認証評価のフォローアップとして有効であったと言えよう。

別表1 基準ごとの指摘事項(数値は件数)

別表2 改善報告書の審査結果(数値は件数)

※H27及びH28の「改善」にはそれぞれ1短期大学が含まれている。

平成30年度から新評価システム

 評価機構では、これまでの評価活動や大学へのフォローアップなどの経験を生かし、より良い評価システムの構築を目指している。
 平成28年3月31日付けで公布された文部科学省の認証評価に関する細目省令の内容を踏まえて、評価機構は、大学等の自律的な改革サイクルとして、三つのポリシーを起点とする内部質保証の機能を重視した評価制度への転換を行うなど、大学及び短期大学の評価システムの大幅な見直しを行い、細目省令が施行される平成三十年度から新評価システムに基づく認証評価を実施することとした。
 平成29年4月から5月にかけて、全国七会場で新評価システムの説明会を開催している。詳細は評価機構のホームページ(http://www.jihee.or.jp/)を参照していただきたい。
(評価事業部長・陸鐘旻)