日本高等教育評価機構だより(日本私立大学協会発行『教育学術新聞』連載)

平成30(2018)年6月27日分掲載

第3期評価システム改訂に伴う変更点
―受審のてびきの変更点について―

 日本高等教育評価機構(以下「評価機構」という。)が実施する認証評価の評価システムは、実施大綱として、評価基準とともに公表している。それに加えて、実際に評価を受ける大学、短期大学を対象に、評価の実施方法、提出物やスケジュールの詳細などを記載した「受審のてびき」を毎年8月に、翌年度に実施する認証評価のマニュアルとして発行している。
 評価機構が行う認証評価の申請期間は、毎年7月1日から7月31日までであり、「受審のてびき」は、申請があった大学、短期大学に受理通知書とともに、例年、8月の上旬に送付している。
 「受審のてびき」は、「受審に当たって」「評価基準と自己判定の留意点」「自己点検評価書等を提出する」「実地調査を受ける(事前準備を含む)」「評価結果の確定」「次回の受審まで」「付録(様式等)」で構成されている。
 今号では、今年度から実施する第3期認証評価システムの改正に伴う主な変更点について、「受審のてびき」構成に沿って解説することとしたい。

1.評価基準と自己判定の留意点

①評価基準の再編
 第2期の評価基準の「基準2 学修と教授」が広範囲にわたるものであったため、「基準2 学生」「基準3 教育課程」「基準4 教員・職員」に分けることとした。内容についても、平成29(2017)年4月施行の学校教育法施行規則や大学設置基準の改正を踏まえ、「『3つのポリシーの策定及び公表の義務化』及び『SDの義務化』」を評価の視点などに加えるとともに、新たに基準項目「4-4 研究支援」を追加した。
 また、新「基準5 経営・管理と財務」については、旧「基準3 経営・管理と財務」と名称は同じであるが、教学ガバナンスと職員の内容が新「基準4 教員・職員」に移ったため、より法人の管理運営に特化した内容となった。第3期の認証評価では、大学等の質的転換や内部質保証の確立の状況を重視した評価制度に転換することが期待されている。それに伴い、「内部質保証の重視」を基本的な方針に加えるとともに、基準を再編し、新たに「基準6 内部質保証」を設定し、重点評価項目とした。また、重点評価項目として位置付けた基準6については、他の基準1~5の評価とも関連付けた評価を行うこととした。
②「特記事項」の追加
 評価基準は、基本的・共通的な内容に限定している。そのため、第2期までの認証評価においては、大学が個性・特色として重視している領域について独自に基準を設定し、自己点検・評価することを求めていた。第3期では、その独自の基準に加え、特筆したい特色ある教育研究活動や事業等について、「特記事項」として記述を求めることとした。
 この特記事項は、特色ある教育研究活動や事業等を社会に公表することで、大学の取組みのさらなる向上と、ほかの大学の改革・改善の参考となることを期待し、独自基準で記述した内容以外に、特にアピールしたい点を3つまで、1ページ以内で記述できることとしている。

2.自己点検評価書等を提出する

①他の質保証制度との連携
 大学等に対しては、各種質保証に係る調査や評価が実施されているが、必ずしも制度間の連携が十分に図られていないという中央教育審議会の「審議のまとめ」での指摘を踏まえ、認証評価において、設置計画履行状況等調査(アフターケア)の対応状況を踏まえた評価を行うこととした。具体的には、直近の設置計画履行状況等調査への対応状況についてまとめたものを、エビデンス集(資料編)の基礎資料に追加した。
 また、併せて、過年度の認証評価において指摘された改善事項への対応状況についてまとめたものも、同基礎資料に追加した。
②評価の効率化
 第3期の認証評価では、効率的な実施を目指し、自己点検評価書の記述及びエビデンス集の内容並びに提出方法を変更した。
a.法令等の遵守状況について
 第2期までの評価基準では、評価の視点に沿って、自己点検・評価をするに当たり、確認や必要に応じて記述を求めていた法令の遵守状況をチェックリスト化し、自己点検評価書の巻末に一覧として記載し、公表することとした。
b.エビデンス集(データ編)について
 大学改革支援・学位授与機構や大学基準協会などの評価機関が参加する認証評価機関連絡協議会において共通の基礎データ様式を作成した。それを採用することにより、基礎データと重複するデータの様式を削除した。
 また、これまでは、簡易製本して紙媒体での提出を求めていたが、PDFデータでの提出に変更した。
c.エビデンス集(資料編)について
 基礎資料として提出を求めている「シラバス」について、紙媒体からPDFデータでのみの提出に変更した。また、書面調査中に請求する「実地調査前に求める資料」については、書面質問の回答と併せて、Eメール添付で提出することに変更した。
 なお、「シラバス」及び「実地調査前に求める資料」については、いずれも実地調査時に紙媒体を1部用意することとしている。

3.実地調査を受ける(事前準備を含む)

評価の効率化の観点などを踏まえて、実地調査の基本スケジュールの時間配分を変更した。
a.顔合わせと大学責任者との面談について
 顔合わせと大学責任者の面談は続けて行うこととし、これまでより30分減の合計90分で実施することとした。
b.学生面談について
 これまでも実施していた学生面談は、第2日から第1日に変更し、「責任者面談」と「大学関係者と基準ごとの面談」との間に実施することとした。
c.教育研究環境の視察について
 第1日から第2日に変更し、90分から60分に削減した。
d.終了の挨拶の実施
 ピア・レビュー精神及びコミュニケーション重視の観点から、お礼などを伝える挨拶の時間を新たに設けた。

4.評価結果の確定

①「優れた点」の基本的な考え方の見直し
 第3期認証評価では、「優れた点」の基本的な考え方を見直し、「優れた点」を全て公表するとともに、できるだけ多くの「優れた点」を挙げられるよう、新たに細則を制定した。
 各大学、短期大学の特色を積極的に評価できるよう、それぞれの自己点検評価書においても、使命・目的の達成や質保証のための全学的に注力している取組みについて積極的に記載することを期待したい。
②意見申立てへの対応
 実地調査後、評価チーム評価報告書案と評価報告書案に対して、2回の意見申立てを受付けているが、そのうち2回目の意見申立てについては、過年度受審大学の要望などを踏まえ、判定委員会での審議結果を認証評価結果と併せて通知することとした。
 以上が第3期認証評価に向けての主な変更点であるが、「受審のてびき」は、平成30(2018)年度に限り、「大学機関別認証評価 受審のてびき(9月版)」(平成29(2017)9月発行)と「大学機関別認証評価 受審のてびき(続)」(平成30(2018)年6月発行)に分冊している。平成31(2019)年度版については、例年通り、今年の8月に発行する予定である。
 今年度からの第3期認証評価システムの実施に当たっては、試行的評価を実施しなかったため、今年度の評価での受審大学や評価員の意見をもとに微修正を加える可能性がある。その場合には、あらためて、ホームページやメールマガジン、各種説明会を通じて情報を逐次発信していく予定である。
(評価事業部評価事業課課長 永井良政)

◆ 「優れた点」の基本的な考え方

  • 使命・目的などに照らして、「優れている」と判断した事項
  • 他大学の模範となるような先進的な取組みであり、かつ十分に成果を挙げている場合
  • 質の保証及び向上に寄与する取組み
  • 個性・特色があり一定の成果を挙げている取組み
  • 先進的で一定の成果を挙げている取組み
  • 十分に成果を挙げている取組み
  • 十分に整備され機能している取組み
  • 他大学の模範となるような取組み
  • など