日本高等教育評価機構だより

令和4(2022)年10月19日分掲載

大学の内部質保証を担う人材養成に資する研修員受入制度

本年(令和4年)3月18日、中央教育審議会大学分科会質保証システム部会が公表した「新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について(審議まとめ)」でも述べられているように、現在、大学においては、内部質保証の取組を強化することと、その質保証を担う事務職員の資質能力の向上が求められており、職員の果たす役割は一層重要なものとなっている。日本高等教育評価機構(以下「当機構」)においても、各大学の内部質保証を担う人材の養成が重要であると考え、当機構発足後、研修員受入制度を設けて、毎年度実施している。本稿では、その制度の概要と研修の内容を中心に紹介する。

制度の概要

当機構の研修員受入制度は、「評価業務の実務経験、評価関連行事の運営等への参画等を通じ、認証評価の意義・内容及び高等教育に係る法令等や大学運営等について理解を深めるとともに、各大学における内部質保証機能の充実、評価業務の円滑な遂行に資する人材を養成する」ことを目的としている。平成18年度から本年度まで、延べ119人の研修員を受け入れてきており、本年度は、7人の研修員が在籍している。

募集は、会員校等に対し、毎年度9月から11月にかけて行っている。募集人員は年度により異なるが、概ね10人前後である。研修期間は原則1年間としているが、更新も可能である。勤務地は東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷に隣接する当機構事務所で、就業は原則として当機構の規則による。

研修員の年齢層は20代、30代が多いが、所属大学での経歴は、総務課、人事課、入試広報課、学生課など幅広く、所属部署での認証評価への関わり方もさまざまである。派遣元の所属大学は、関東の大学、次いで関西の大学が多いが、東北から九州まで幅広く、遠方の大学からも少なくない。

主な研修内容

当機構では、評価事業の実務研修と聴講・見聞型研修の二つの研修を設けている。

評価事業の実務研修では、大学や評価員からの問合せへの対応、評価員会議や実地調査の運営、評価報告書のとりまとめなど、年度当初に評価業務を開始してから評価結果が確定する3月まで、一連の業務に携わる。担当する大学数は、当該年度に実施する評価大学数により異なるが、本年度の研修員は1人5大学を担当し、担当大学ごとに、大学の自己評価担当者及び5人の評価員で構成する評価チームとの連絡・調整を行っている。評価実務は詳細なマニュアルに基づいて進められ、大学での経験の浅い方でも作業できるよう工夫している。また、研修員は担当する大学のほかにも、当機構職員が担当する大学の副担当として、会議や実地調査に同行している。これらは、研修員にとってより多くの大学を知る良い機会となっている。

実務研修を進める上で必要となる知識を習得するための聴講・見聞型の研修として、当機構が開催している表1の研修のほか、外部研修として中央教育審議会大学分科会等の傍聴、日本私立大学協会主催の各種研修会への参加、高等教育質保証学会をはじめとする高等教育関係の学会への参加などを積極的に促している(表2参照)。ここでは、表1の中から特徴的な研修として、研修成果報告会と職員等勉強会について紹介する。

表1 当機構が開催する研修

開催時期 聴講・見聞型研修
4月 オリエンテーション
5月 大学業務に関する勉強会
評価に関する勉強会
7月 学校法人の財務に関する勉強会
9月 職員等勉強会(研修員経験者も参加)
翌年3月 研修成果報告会

表2 主な外部研修

聴講・見聞型研修

・中央教育審議会大学分科会等(傍聴)

・日本私立大学協会主催の各種研修会

・認証評価機関連絡協議会主催の評価担当職員研修

・高等教育質保証学会

・大学教育学会

・大学行政管理学会

・学生文化創造職員研究会 等

研修成果報告会

本報告会は、「研修員受入制度実施に伴う成果を把握し、効果の検証及び改善に資すること」また「1年間の研修を経験しての成果等についての報告・意見交換等を通じ、研修員及び職員の意識向上に資すること」を目的とし、毎年3月中旬に開催している。

研修員からは、1年ないし2年、所属大学を離れて評価機関で評価を経験することにより、「自大学を客観的に見ることができ、強みに気付くとともに他大学の良い事例も知ることができた」「大学・評価員・評価機関の三者の視点から多角的に評価事業が進められることを理解した」「文部科学省の会議傍聴や外部研修に積極的に参加することにより、法令の重要性や高等教育政策の最新の動向などを自ら知る習慣が備わった」など、多くの成果が挙げられている。

職員等勉強会

本勉強会は、当機構での研修員経験者、研修員及び職員を対象に、「職員等の資質能力の向上に資するとともに、当機構職員と研修員等経験者との継続的な連携の構築を図ること」を目的に毎年1回開催している。本年度は、9月22日に東京ガーデンパレスで対面で実施し、研修員(経験者含む。)、職員計56人が参加した。

内容は、その時機にあったテーマの講演や事例発表を主としている。本年度は、学校法人のガバナンスをテーマに掲げ、文部科学省高等教育局私学部私学行政課課長補佐の片見悟史氏から「学校法人制度改革の具体的方策について」、学校法人二松学舎常任理事の西畑一哉氏から「私立大学版ガバナンスコードについて」と題し、それぞれ講演があった。また、研修員経験者である学校法人桑沢学園評議員・東京造形大学進路支援課長兼就職課長の南澤義晃氏から「本学におけるガバナンスの取組み状況について」と題し、事例発表があった。

参加者からは、「私立学校法改正での検討経緯や内容について理解を深めることができた」「ガバナンスコードは自ら作成し、自ら実行することが重要であるという見解に共感した」「機構での研修が終わると大学運営等への意識が薄れがちであるが、本勉強会に参加し、意識を向上させることができた」などの声が寄せられている。

当機構の研修を修了した研修員は、所属大学に戻った後、学長室、総務企画課、IR室など、内部質保証に関わる部署で活躍されている方が多い。本研修が研修員一人ひとりにとって実りあるものとなり、所属大学においてその成果が発揮できるよう、より一層研修を充実させ、それぞれの大学の内部質保証の充実に資する人材育成に寄与するよう努めて参りたい。

研修員募集

現在、令和5年度研修員を募集している。締切は、11月18日としており、その詳細については、当機構ホームページでご確認の上、派遣について検討していただければ幸いである。

(総務部総務課係長 吉野由紀)

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