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日本高等教育評価機構だより

令和8(2026)年3月25日分掲載

評価員アンケートから振り返る
第三期認証評価について

評価員アンケートは、次年度に向けての問題点などを把握するために、認証評価に関わった評価員に向けて毎年度実施されている。第3期認証評価の7年間に実施された回答に基づき、第3期の概略を報告するとともに内部質保証や学修成果に対する意見を集約し、そこから浮かび上がる課題などを報告する。
第3期の認証評価の受審校は368校(大学340校、短期大学27校、専門職大学院1研究科)であった。アンケートは、第1回評価員会議開催後(自己点検評価書とエビデンスなどの確認後)と実地調査実施後の2段階の設問から構成されており、それぞれの回答率は90~95%と高い。そのため多数の回答(選択、自由記述)が得られた。

第3期認証評価システムの概略

アンケート全体を概観すると、内部質保証や学修成果に対する回答は、第1回評価員会議までには「とてもそう思う」「そう思う」が50~70%で推移したのに対して、実地調査後は「どちらでもない」「そう思わない」が微増する傾向が認められた。これは、書面上は整えられていても、実地調査の面談において不備が確認される場合もあったためと考えられる。しかし、指摘された問題点が大きく変わることはなかった。実地調査日程が適切であったかについては、評価員の移動距離など諸般の条件によって意見の分かれるところではあるが、実地調査は評価において不可欠とする見解は共通している。
なお、令和2~3年度はコロナ感染が拡大したため、当該年度の実地調査、評価員会議にオンラインが導入された。この点についての回答は、会議・研修はオンラインで十分だが、実地調査・環境視察は対面が望ましいという意見が多数を占めた。オンライン会議等についてはコロナ感染終息後も活用されており、評価員の負担軽減につながっている。
令和4年度にデータ共有のためのクラウド「SharePoint」が導入されたことについて、以下の意見が寄せられた。

  • 従来のメール往復より便利で使いやすく効率的である
  • 評価員同士の情報共有がしやすい
  • 進捗が見える
  • 作業がスムーズに行える
  • 自宅・出張先でも作業ができる
  • 自動保存・資料が整理されていることに安心感がある
    肯定的な意見が多かったが、次のような改善意見も寄せられた。
  • SharePointのDX活用は有効だが、検索性などに改善余地がある
  • 操作性・検索性・権限管理等、ツール面の改善が必要である

なお、SharePointについては毎年度改善が図られ、第4期へと引き継がれている。
評価基準以外の「独自基準」についての肯定的な意見としては、「大学の個性・特色」を最もよく表し評価に大きく役立つ、基準1~6では拾えない取り組みを評価できるなどがある一方で、大学側の記述が「特色」を記述し切れていないため基準としての意義が見えにくい、評価の基準が曖昧で評価員が適切に評価できないという意見も認められた。
平成30年度に新設された「特記事項」は、大学の魅力発信・理解促進に有効であると肯定的に評価された反面、独自基準との記述の重複を指摘する意見も多く、独自基準と特記事項の統合を提案する意見も認められた。またこの2つは、第3期のは評価には直接の影響がないが、独自基準は第4期には「優れた点」を指摘できるようシステム改定が行われた。

内部質保証と学修成果について

アンケートの質問項目は平成30年度の12項目に始まり、最終の令和6年度には29項目になっている。このうち全年度共通の質問項目のなかから、内部質保証や学修成果に関する設問3点と評価システム全体に対する回答を報告する。
前述のように第1回評価員会議までと実地調査後の回答にわずかな動きがあるが、回答内容には大きな影響が認められないため、設問内容に対して「認められる」、「どちらでもない」、「不十分である」として統合し、その主な理由をまとめた。

設問:基準項目3-3「学修成果の点検・評価」において、担当校は学修成果を明確にし、適切に自己点検・評価を行っていたか。

○認められる

  • 3つのポリシーと整合した学修成果を設定し、GPAの経年変化、授業評価アンケート、卒業生調査、資格取得数、就職状況など、多様な指標を多面的に分析している
  • ルーブリックの策定、学修ポートフォリオ(UNIPA等)の活用により、学生と教員が到達度を確認できる可視化体制を整備し、フィードバックが実施されている
  • アセスメント・ポリシーの策定、教学IR委員会の整備、FD活動との連動など、教育改善のための組織的な運用が認められる
  • ジェネリックスキルテスト(PROG等)といったツールを有効に活用し、大学独自のシステムを導入している
  • 少人数指導での状況が共有されている

○どちらでもない

  • 仕組みは整いつつあるが結果(改善実績)がまだ示されていない点
  • 自己点検評価書の内容だけでは実態が把握できず、書面質問や実地調査での確認が必要である

○不十分である

  • 学修成果の定義がなく、ディプロマ・ポリシー(DP)との結びつきが不明確であり指標が曖昧である
  • 記述が抽象的であり、会議録や具体的な分析データ、フィードバックの事例などのエビデンス(根拠)が不足している
  • 点検・評価の結果が具体的に見えない
  • 授業アンケートや卒業生アンケートの回収率が低く、客観指標が不足なため分析の信頼性に欠ける
  • 評価基準(ルーブリック等)の運用が未成熟である
  • 学修成果についての理解が欠如している

基準項目3-3「学修成果の点検・評価」の肯定的な評価ポイントは、多様な指標の有無、学修成果の可視化体制整備、教育改善のためのフィードバックがあげられる。
不十分であるとする評価ポイントは、学修成果の定義の曖昧さ、エビデンス不足、学修成果についての理解不足などが問題として指摘されている。

設問:基準項目6-1「内部質保証の組織体制」において、担当校は内部質保証の組織の責任体制を明確にし、適切に自己点検・評価を行っていたと感じたか。

※平成30年度の評価員アンケートにおいて、「内部質保証」についての大学の理解不足が多く指摘されたため、内部質保証の実態を図る項目として令和元年度から追加された質問項目。

○認められる

  • 内部質保証の方針・規程・体制(内部監査など)が整備され、学長主導の責任体制をはじめ自己点検委員会や推進委員会などの重層的な体制が整っている
  • 法人・教学一体の体制をとり、EM・IR室が整備され、継続的な点検・評価(中期計画等)が実施されている

○どちらでもない

  • 基本的な組織体制は整っているが、委員会の役割、関係性や運用が不明瞭である
  • エビデンス、記述共に不足である
  • 教職員全体の理解が不足し、活動が形骸化している
  • 認証評価に合わせて急造された印象が否めない

○不十分である

  • 内部質保証やPDCA サイクルについての理解が不足し、学長のリーダーシップの下でPDCAが実質的に機能していない
  • 大学としての質保証体制が構築されておらず機能が成立していない
  • 関係委員会の関係性が曖昧であり、役割・責任体制が不明確である
  • 組織が形骸化している
  • 議事録の整備不足などエビデンスが不足している
  • 教職員全体の理解が不足している

基準項目6―1「内部質保証の組織体制」の肯定的な評価ポイントは、内部質保証体制の有無、学長主導の責任体制、継続的な点検・評価体制の有無があげられる。なお、「認められる」との回答は、前半(平成30~令和2)で高く、後半(令和3~令和6)で減少傾向にある。
不十分であるとするポイントは、内部質保証についての理解不足、組織体制の不整備、責任体制不明、エビデンス不足があげられる。

設問:基準項目6-3「内部質保証の機能性」において、担当校は内部質保証について適切に自己点検・評価を行っていたと感じたか。

○認められる

  • 学長のリーダーシップのもと組織的な内部質保証体制が整備されているため、PDCAサイクルが制度として明確に構築され機能している
  • 3層(機関・教育課程・科目)でのアセスメント体制によって、3つのポリシーを起点としたPDCAの仕組みが恒常的に機能して、教育改善に結びついている
  • 外部評価などの多層的なフィードバックを活用している

○どちらでもない

  • 機能性は高いが、課題としてトップダウン傾向への懸念もある
  • 3つのポリシーやアセスメント・ポリシーがあり全体としてPDCAは機能しているが、改善の余地がある
  • 内部質保証の組織はあるが、機能性向上の余地がある
  • エビデンス(機能性の判断材料・具体例)が不足している
  • 開学間もないため、PDCAの仕組みは整備中であり定着には時間が必要である

○十分である

  • 自己点検評価が認証評価対応のための形式であり、PDCAが実質的に機能していない
  • 内部質保証の概念理解が不十分である
  • 改善内容などについてエビデンス不足である
  • 3ポリシーやアセスメント・ポリシーが未整備である

基準項目6-3「内部質保証の機能性」の肯定的な評価ポイントは、3つのポリシーを起点としたPDCAサイクルの有無に集約される。
不十分であるとする評価ポイントは、内部質保証自体の理解不足に集約され、エビデンス不足もあげられている。

設問:第3期評価システム全体についての意見

  • 多くの大学で内部質保証の理解・運用が不十分である
  • 内部質保証の解釈差が大きく、最低限の到達像や判断材料の明文化が必要である
  • 内部質保証の成果・効果の評価指標と判断例の明確化が必要である
  • 基準6(内部質保証)は、解釈のばらつきが目立つと共に、自己点検評価書の記述内容が重複するケースが多々あり、評価方法が難しい

内部質保証への理解が大学によって異なるという意見は、第3期の評価員アンケートから浮かび上がる重要な問題であり、このことを受けて第4期では内部質保証を「基準2」として重要度を強調した。また、第4期への移行に当たり、内部質保証の実質化が未定着のまま移行する中小規模校への支援が課題であるとする意見からは、今後の認証評価における重要な方向性が得られたと考える。

そのほかの意見は以下のとおりである。

  • キーワード検索など、SharePointの機能改善を要望する
  • 第1回評価員会議は時間を確保し対面で行うべきである(令和2-3年度)
  • アセスメント・ポリシーやIRの具体的な説明が必要
  • 現行のシステムは妥当だが、項目の簡素化・重複解消、研究項目の追加、判定の柔軟化(例:「概ね満たす」)大学規模・個性への配慮を要望する
  • 現行は上限のみページ数の下限も設定した方が良い

以上の評価システムに関わる回答や当機構に対しての要望については、機構内で順次検討を進め改善を図っていく。
(副理事長 沢 良子)

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